2026年度 私立医学部一般選抜は“読みにくい”

― 文科省方針と試験日集中が生んだ構造的変化 ―

2026年度の私立医学部一般選抜(前期)は、ここ数年でも特に“読みづらい”入試になっています。

出願者数の増減だけを見ると、「易化した大学が多い年」に見えるかもしれません。

しかし、その背景には制度上の大きな変化が存在します。

中心にあるのが、文部科学省による

「大学入学者選抜実施要項」の遵守要請です。

本記事では、2026年度入試がなぜここまで複雑化したのか、その構造を整理して解説します。

目次

  • 文部科学省「大学入学者選抜実施要項」とは何か
  • 私立医学部では「1月一次試験」が常態化していた
  • 私立医学部14校のうち5校が「2月実施」へ移行
  • 試験日が一気に重なった結果
  • 出願者数は「確定前」― 冷静な判断を
  • 私立医学部2026年度一般選抜前期 出願速報

1. 文部科学省「大学入学者選抜実施要項」とは何か

文部科学省は、全国すべての大学に対して毎年

**「大学入学者選抜実施要項」**を示しています。

これは法律ではありませんが、

実質的には大学入試の“ルールブック”にあたる存在で、

国公私立を問わず、原則としてすべての大学が従うべき指針です。

この要項には、一般選抜について次のように明記されています。

学力試験は、2月1日以降に実施すること

つまり、

学力試験=2月1日以降

というのが制度上の原則です。

この原則は、高校現場からの強い要請を背景に設けられたものです。

2. 私立医学部では「1月一次試験」が常態化していた

ところが私立医学部では長年にわたり、

  • 一次試験は「基礎学力確認」
  • 最終的な合否は「二次試験で決定」

という建前のもと、

**1月中に一次試験(実質的な学力試験)**を実施する大学が多数存在していました。

しかし実態を見ると、

  • 一次試験で大規模な足切り
  • 合否の大部分が一次試験の得点で決定
  • 二次試験は確認的要素に近い

というケースも少なくありません。

形式上は「一次」でも、

実質的には合否を左右する学力試験が1月に行われていた

というのが、私立医学部入試の現実でした。

文部科学省が「要項遵守」を強く求めた理由

近年、文部科学省はこの状況を問題視し、

要項の厳格な遵守を求める姿勢を明確化しました。

背景には、

  • 高校教育への影響
  • 受験機会の公平性
  • 国公立大学入試との整合性

といった要素があります。

特に、

「学力試験を1月に実施することが常態化している状況は、

要項の趣旨から逸脱しているのではないか」

という認識が強まり、

事実上の是正要請(通達)が各大学に出されたのです。

3. 14校のうち5校が「2月実施」へ移行

この通達を受け、

2025年度に1月一次試験を実施していた私立医学部14校のうち、

5校が2026年度から2月実施へ移行しました。

これは単なる日程変更ではありません。

  • 文部科学省の方針を強く意識した対応
  • 今後も継続的な指導が行われることを見据えた判断

と見るのが自然です。

大学側には補助金制度もあるため、

文科省の意向に逆らうことは現実的に難しいという事情もあります。

それでも「1月実施校」が残った理由

― 最大の壁は試験会場の確保 ―

2026年度入試でも、

一部の私立医学部では1月一次試験が残る形となりました。

最大の理由は、試験会場の確保問題です。

私立医学部の一般選抜は、

  • 数千人規模の受験生
  • 全国複数会場同時実施
  • 多数の監督・運営スタッフ

を必要とする、大規模な入試です。

一方、2月上旬の土日は、

  • 国公立大学二次試験
  • 他学部の一般入試
  • 国家試験・資格試験

が集中する「会場争奪戦」の時期です。

特に首都圏・関西圏では、

「数千人規模の会場を新たに確保するのは物理的に不可能」

という大学も少なくありませんでした。

「1月実施=問題なし」ではない

重要なのは、

1月実施校が“問題なし”と判断されたわけではない

という点です。

今回の通達は、

  • 即時全面禁止
  • 一律強制

ではなく、

各大学の事情を考慮した段階的是正の性格を持つものでした。

つまり、

  • 2026年度は経過措置的に1月実施が残った
  • ただし将来的な是正は前提

と見るのが自然です。

大学関係者の間でも、

「来年度以降も1月実施を続けるのは厳しい」

「中長期的には2月以降への完全移行は避けられない」

という認識が広がっています。

4. 試験日が一気に重なった結果

こうして、

  • 1月に分散していた一次試験
  • 2月上旬に集中

という状況が生まれました。

2026年度は、私立医学部同士が同日に重なる日程が続出しています。

主な日程重複例

  • 2月1日
    日本大学/東京女子医科大学/川崎医科大学/久留米大学
  • 2月2日
    日本医科大学/杏林大学/東海大学/福岡大学
  • 2月3日
    東海大学/順天堂大学/北里大学/金沢医科大学
  • 2月4日
    金沢医科大学/東京医科大学/藤田医科大学

医学部受験では併願戦略が極めて重要ですが、

同日に3~4校が重なれば物理的に併願できません。

その結果、

  • 志願者の分散
  • 出願者数が減る大学が続出

という現象が起きています。

5. 出願者数は「確定前」― 冷静な判断を

ここで注意すべき点があります。

出願締切後であっても、

  • 大学側の事務処理が未完了
  • 正式な出願者数として未反映

というケースは珍しくありません。

そのため、

  • 締切後に数字が増える
  • 後日修正される

ことも十分あり得ます。

速報値だけを見て、

「倍率が下がった」

「今年は狙い目」

と判断するのは、非常に危険です。

それでも志願者を伸ばした大学もある

全体として志願者減少が目立つ中、

明確に志願者を伸ばした大学も存在します。

代表例が、藤田医科大学です。

藤田医科大学が伸びた理由

  • 学費の引き下げ
  • 受験生・保護者への強いメッセージ性

医学部入試では、

学費は志願者数に直結する要素であることが、

改めて示された形です。

2026年度入試は「過渡期の象徴」

2026年度の私立医学部入試は、

  • 文部科学省方針の本格運用
  • 大学ごとの対応の差
  • 受験生側の負担増

という点で、まさに過渡期の入試です。

倍率だけを見て

「易化」「難化」

と判断するのは危険であり、

制度変更の影響を除いた“実質的な難易度”

をどう読むかが、これまで以上に重要になります。

まとめ

  • 一般選抜の学力試験は本来「2月1日以降」が原則
  • 文部科学省の通達により、1月実施校が2月へ移行
  • 会場確保の問題で、経過措置的に1月実施が残った大学もある
  • 試験日重複は構造的問題になりうる
  • 出願者数だけで易化と判断するのは危険

医学部入試は、

**勉強量と同じくらい「情報の読み取り力」**が合否を左右します。

2026年度入試は、そのことを強く示す年になりました。

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