私立医学部専願者が「共通テストを受けない方がいい」理由

チャンスを増やすどころか、合格確率を下げる“静かな落とし穴”

私立医学部を第一志望、あるいは専願で目指す受験生に、私は一貫してこう伝えています。

「共通テストは受けなくていい。むしろ受けない方がいい」

ところが現実には、多くの塾や予備校がこう言います。

「合格のチャンスを増やすために共通テストも受けましょう」

結論から言うと、この助言は、私立医学部受験の構造を理解していないことが多い。
「やった方が得に見える」だけで、実際は**合格に最も重要な資源(時間・集中力・メンタル・体調)**を奪うからです。

以下、理由を1つずつ、具体的に整理します。


目次

  1. 私立医学部の共通テスト利用は「ボーダーが異常に高い」
  2. 共通テストと私立医学部は「別競技」──練習にもなりにくい
  3. 2日間では済まない。直前期の“損失”が致命傷になる
  4. 自信喪失・体調不良という「見えないリスク」
  5. 「チャンスが増えるから受けろ」という指導が危険な理由
  6. 私立医学部専願者がやるべきことは明確

1.私立医学部の共通テスト利用は「ボーダーが異常に高い」

最大の理由はここです。

私立医学部の共通テスト利用入試は、名前は「利用」でも実態は、超上位層向けの別枠になりやすい。
得点率の目安として挙げられやすいのが、90%前後というラインです。

  • 順天堂:90%前後
  • 帝京:90%前後
  • 関西医科:89%前後
  • 大阪医科薬科:89%前後

この得点率は、共通テスト受験者全体の中でも最上位層です。
しかも、共通テスト利用は募集人数が極端に少ない大学が多い。募集が数名〜10名程度なら、ボーダーが上がるのは当然です。

さらに構造的に厳しいのが、ここです。

共通テスト利用の主戦場は「国公立医学部志望の上位層」

国公立志望者は共通テストを受けるのが前提です。
その上で私立医学部を併願するとき、共通テスト利用は「追加負担が少ない」。
結果として、強い層が大量に流入し、専願者が“勝負しにくい市場”になります。

要するに、私立専願者にとって共通テスト利用は「チャンス」ではなく、
勝ち筋が細い上に、コストだけかかる可能性が高い枠になりやすいのです。


2.共通テストと私立医学部は「別競技」──練習にもなりにくい

次に重要なのが、試験の性質がまったく違う点です。

共通テストの特徴

  • 情報処理量が多い
  • 問題文が長く、誘導に乗る力が重要
  • “読んで処理する”比重が高い

私立医学部一般の特徴

  • 知識の深さと正確さ
  • 短時間での処理
  • 既知の典型(頻出テーマ)を確実に取り切る力

同じ「英語」「数学」「理科」でも、求められている能力が違います。
したがって、共通テスト対策を積んでも、私立医学部一般の得点力が直接伸びるとは限らない

「共通テストは基礎固めになる」という意見もありますが、これは一般論です。
私立医学部に届く層の受験生にとっては、共通テスト対策が**“伸びない努力”になりやすい**のが現実です。


3.2日間では済まない。直前期の“損失”が致命傷になる

共通テストは2日間です。
しかし、私立医学部受験における損失は2日では終わりません。

  • 直前の切り替え(科目配分・思考様式の切替)
  • 当日の移動・待機・拘束
  • 試験後の疲労・立て直し
  • 自己採点による感情ブレ

体感としては3〜4日分、学習効率が落ちます。

そしてその時期は、私立医学部受験で最も重要な期間です。
過去問の最終調整、苦手の潰し切り、得点源の完成。
この時期に「合格につながりにくい試験」に時間と集中を割くのは、戦略として合理的ではありません。


4.自信喪失・体調不良という「見えないリスク」

共通テストを受けると、起きやすいのが次のような現象です。

  • 思ったより点が取れず動揺する
  • 周囲との比較で自信を削られる
  • 自己採点でメンタルが乱れる
  • 長時間試験・寒さ・移動で体調を崩す
  • 慣れない会場・人混みで消耗する

私立医学部受験は、最後は「当日力」と「安定運用」で決まります。
ここで自信を削ったり、体調を落とすのは致命的です。

共通テストの結果で揺れたまま、その後の私立一般に突入して崩れるケースを、私は実際に見てきました。


5.「チャンスが増えるから受けろ」という指導が危険な理由

塾や予備校が言いがちな言葉があります。

「受けておけばワンチャンありますよ」

冷静に分解すると、こうなります。

  • 必要得点率は90%前後になりやすい
  • 定員が少ない
  • 全国上位層が集中する
  • しかも多くは共通テスト前に出願(結果を見て出せない)

これを「チャンス」と呼ぶのは、かなり危うい。
受験生側は「奇跡が起きるかも」と期待してしまうのは自然ですが、
それに乗せて「チャンスが増える」と勧めるのは、戦略として誠実とは言いにくい。

さらに厄介なのは、共通テスト利用で不合格が続くと、
一般選抜へ向かう気持ち自体が削られることです。
必要なのは「低確率の当たりを増やす」ことではなく、
高確率の合格ルートを太くすることです。


6.私立医学部専願者がやるべきことは明確

結論はシンプルです。

私立医学部専願者がやるべきことは、私立医学部一般入試に100%集中すること。

  • 大学別の出題傾向分析
  • 科目ごとの得点戦略(何を捨て、何を取り切るか)
  • 合格最低点からの逆算
  • 過去問での時間配分と「失点パターン」の矯正

これが、最短距離です。

共通テストは「受けられるから受ける試験」ではありません。
志望と戦略に合わない試験は、受けない判断もまた戦略の一部です。

私立医学部受験は、
「全部やる人」ではなく、やらないことを正しく選べた人が勝ちます。
時間は有限で、直前期は特に貴重です。

共通テストを受けない選択は、逃げではありません。
それは、私立医学部合格に本気で向き合った人だけができる、合理的判断です。

最後に、こう自問してみてください。

「共通テストで、国立医学部のボーダーを安定して超えられる得点率を出せるか?」

もし「YES」と言えるなら、共通テストを受ける意味は出てきます。
しかし多くの私立専願者にとっては、答えは現実的に「NO」のはずです。
その場合、受けるメリットより、失うものの方が大きい。


 

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